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広島高等裁判所 昭和24年(う)514号 判決

被告人

占部一正

主文

本件控訴は之を棄却する。

理由

弁護人中川鼎の控訴趣意第二点について。

原判決は証拠力なき傳聞証拠を採用したる違法があるというのであるが原判決挙示の証拠中の一部に傅聞証拠に属する部分のあることは所論の通りであるが判決には証拠の標目を示すことを以て足りその具体的事実を示すことを要しない從つて原判決亦單に証拠の標目を示すに止まり挙示の証拠中いづれの部分を取捨したかは明かでないが右証拠中相矛盾する部分は認められないのみならず右傳聞証拠に属する部分を除いても他の証拠により優に判示事実を認定するに足る(中略)論旨は理由がない。

(弁護人中川鼎の控訴趣意第二点)

訴訟手続の違反に付て

原判決は被告人が同意した場合か若くは法定の場合にあらざる限り証拠として採用し得ない所謂傳聞証拠を証拠として採用した違法がある。

一、即ち刑事訴訟法第三百二十六條により被告人が同意した場合であるか又は同法第三百二十一條第一項第三号所定の場合でない限り傳聞証拠は証拠として採用し得ないのにも拘らず、被告人の同意を得ず又前記第三百二十一條第一項第三号所定の場合なるや否やを毫も確むることなく傳聞証拠を証拠として採用しているのである。即ち

二、原審認定の第一事実に付

被告人が高森保等と共謀せる事実に付ては前記一事実の誤認に付ての第二、一に掲記せる(イ)証人大井敏夫の(b)(d)、(ロ)証人北村コシカの(c)(d)の各証言を採用して居り

三、原審認定の第二事実に付

被告人を有罪と認定するに付前記第三、四に掲記せる証人加藤昇造の(a)(b)(c)の各証言を採用していて

四、以上は何れも刑事訴訟法第三百二十四條の所謂傳聞証拠に属するものである。

五、而も右各証言は被告人が有罪なりや否やに付重要なる証拠であつて判決に影響を及ぼすこと明なりと謂はねばならない。

以上の点よりするも原判決は破棄を免れないものと確信する。

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